こんにちは。甘鯛です。
今回は行動経済学の第一人者であるダン・アリエリー著
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』をレビューします。
本書との出会いは12年ほど前、
大学在学中の広告効果を学ぶマーケティングの講義で教授から紹介されたことがきっかけ。
本書は行動経済学の内容になりますが、いわゆる、お勉強的な固い印象では決してありません。
私たちの日常生活における何気ない選択や意思決定のメカニズムについて、
身近な多くの事例をあげ行動経済学の観点からわかりやすく解説されています。
私は特に、人間の行動選択や思考の「癖」を考えさせられました。
本書の内容は非常に興味深く以来、社会人になってからも何度も読み返しています。
本書は、以下のような読者様のお役立ちでき自信をもっておすすめできる名著。
・自身の日頃の購買行動について考えてみたい、
・物事を継続する習慣化のヒントを知りたい、
以降では、特に役立つ本書のポイントを絞りながら、レビューを進めていきます。
著者紹介
ダン・アリエリー
1968年4月29日生まれ。イスラエル系アメリカ人。デューク大学教授。
行動経済学研究の第一人者。テルアビブ大学で心理学を学んだ後、
ノースカロライナ大学チャペルヒル校で認知心理学の修士号と博士号、
デューク大学で経営学の博士号を取得。
その後、MITのスローン経営大学院とメディアラボの教授を兼務した。
この間、カリフォルニア大学バークレー校、プリンストン高等研究所などにも在籍。
18歳のとき、全身70パーセントにやけどを負う事故にあい、3年間を病院で過ごした。
その結果、いささか型破りなものの見方を身につけたといわれている。
その研究のユニークさは、2008年度にイグノーベル賞を受賞したことでも証明されている。
『不合理だからうまくいく 行動経済学で「人を動かす」』 など著書多数。
不合理とは?
冒頭で述べた通り、人間は不合理な選択をする生き物である。
ではここでいう「不合理」とは一体どのようなものでしょうか?
本書では、以下のように「不合理」を捉えています。
合理的の逆で、決断に役立つ情報を知らない、目の前の様々な選択肢の価値を計算できない、
それぞれの選択による結果を何にも邪魔されずに評価できないこと。
簡潔にいうと、本来的に目的とするものごとを目指す方向へ効率的に前進できないことであり、
理想や完璧といわれる状態からほど遠くなってしまうことです。
目的や目指す方向性はわかっている。けれども、最短距離で効率良く進めない矛盾。
我ながら、心当たりがありすぎて頭が痛くなりますね…
大学時代の投資の失敗、人間関係、日常生活の無駄な出費、etc
皆様もより合理的に考え選択できれば、と考えたことはあるのではないでしょうか。
人は相対的な優劣で価値判断を行う
物事を絶対的な基準で決めることはまずない。
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』より
ものごとの価値を教えてくれる体内時計など備わっていないのだ。
ほかのものとの相対的な優劣に着目して、そこから価値を判断する。
要するに、人間が対象の物事をジャッジする際には、
必ず対象を他の何かと比較することで価値を見い出している、ということです。
当たり前のように思えますが、冷静に考えるとその通りですよね。
身の回りのことを例にあげてイメージしてみますと、わかりやすいもので「数値」があります。
身長、体重、年齢、体脂肪率、物価、階数、偏差値、年収、資産額、株価、PER、EPS、etc
いずれも他と比べることで、対象を認識することが可能になるものばかりですね。
アンカリングに影響される
例えば、過去記事でとりあげたAmazon Black Friday。
2021年11月26日(金)9:00~12月2日(木)23:59にAmazonで行われた大型セール。
もちろん商品によって割引率は様々ではありましたが、
最大90%offのものまで通常価格から期間限定で大幅な割引で販売されました。
大人気のAirPods Proが上記のようになっていたら、魅力的ですよね。
初めに30,580円を提示しアンカーを打っておけば、消費者にアンカリング(条件化)されます。
その後に、さらに低価格の27,500円を示せば、消費者は「安い!」と感じるものです。
これは先述した通り、人間は相対的に物事を判断する、という特性を利用したPR効果です。
先に与えられた条件がベースとなり、
対象のジャッジを行う傾向が多いということをぜひ覚えておいてくださいね、
無料の魔力
無料で10ドル分のアマゾンギフト券を受け取るのと、
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』より
7ドル出して20ドル分のアマゾンギフト券を受け取るのではどちらがいいのだろう。
上記について、どちらがお得か?
3秒以内に即答してください。
冷静に考えると当然、後者ですよね。しかし、「無料」というパワーワードに引っ張られ、
一瞬判断に迷いが生じるケースが多いです。実際に、私もそうでした 笑。
多くの人にとって「無料」の引力が強く、非合理的な選択をすることが多々あります。
先送りのプロ
人間は先延ばしのプロフェッショナルである。
これも面白い主張ですね。
わたしたちの実験の協力者は、すべてにおいて判断を誤った。
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』より
もっとも聡明で合理的な人でも、情熱の中では、
自分が思ってる自分とは完全にすっぱり切りはなされてしまうようだ。しかも、
ただ自分について誤った予想をするというだけでなく、その誤りの程度が甚だしい。
要するに、人間は感情的な生き物であり、判断は感情により大きく左右される、ということ。
ゼロベースの冷静な状態と興奮状態では、下す判断が大きく異なり全く異なる行動をします。
先送りするとは、目先の満足のために長期目標を諦めることを意味しています。
例えば、学生時、夏休み前に宿題を早めに終わらせようと決める(冷静な状態)が、
実際に夏休みに入ると楽しいことが増え(興奮状態)宿題は後回しになるパターンなどですね。
これについては、私の趣味である米国株投資でも同様のことがいえます。
米国株投資をしよう!けれども、出費が多くて資金が貯まらず結局、投資ができない。
そういう自分も大学時代、衝動買いや無駄な友達付き合いなどで浪費しておりました。
浪費が悪いと一概に主張するつもりはありません。しかし、自分の意志で決定したことを
合理的に進めることの難しさを身をもって経験することができました。
だからこそ、つみたてNISAやiDeCoなどの税制面の優遇制度を活用しながら、
無感情かつ機械的につみたて投資を行う習慣こそが、最優先すべき投資手法だと私は考えます。
もちろん、投資対象を誤らないことが前提です。投資信託の積立設定を利用することで、
目先の感情に惑わされずに、資産運用を行うことができます。
利用価値のある投資信託については、過去記事をぜひご参照ください。
自分の物は特別だと勘違いする
自分の所有物を過大評価してしまう傾向は、人の基本的な偏向であり、
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』より
自分自身に関係あるものすべてにほれこみ、過度に楽観的になってしまうという、
全般的な性向を反映している。
自分の保有物や関係する物事=価値があるもの、と考える傾向についてです。
学校、会社、株式、住居、衣服、家具、家電、食品、etc
皆様も思い浮かぶものが沢山あるのではないでしょうか。
こうした傾向は「保有意識」と呼ばれます。
「保有意識」を大別していくと、以下に分類できます。
- 惚れ込む
保有するものへの愛着心。保有・接触の期間に比例し増していきます。 - 失う
物事を失うことは、多くの場合に悲観の感情に繋がります。 - 思い込み
あなたが良いと思ってる感情を勝手に相手も共有してると思うこと(プラセボ効果)。
上記のように「保有意識」の各要素に関しては、
良い方にも、悪い方にも向かうことはしっかりおさえておきたいポイント。
「保有意識」と冷静に向き合うのは、感情の生き物である人間にとって特に難しい側面ですね。

選択の自由と引き替えに本当の目的を失う
個人的には、最も響いた主張。
自身の目的を果たす上で、選択と集中が欠かせないということです。
子供の可能性を広げたいからと、
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』より
たくさんの習い事をすることはひとつのことに本当に秀でる機会を手放してます。
親は子に期待を込めて沢山の学びチャンスを与えようとします。
これ自体は決して誤りではありませんが、多くの選択肢に直面すると、
本来の目的が不透明になり、手段が目的化してしまうことがあるということが述べられています。
こうした背景として、人間は決断することが苦手であることをあげています。
多くの選択肢や物事から1つを決定することは、思考を司る脳に負担がかかるからです。
複数に着手したものの、結果的に1つも成果として得られないケースは日常的にありますよね。
二頭を追うものは一頭も得ず、にならぬように自身にとって、最優先すべき物事に集中すること。
とりわけ、慣れていないことに対しは、マルチタスクではなくシングルタスクで集中する方が、
手堅く成果を得ていくことに繋がる傾向が多いところは共感ポイントでした。
まとめ
本書のポイントを解説してきました。
今一度、要点をシンプルに整理しておきます。
- 人は比べて価値を決定する
- アンカリングによる価値基準
- 無料というマジックワード
- 人は先送りのプロ
- 自分の物は価値が高い
- 選択の自由により本来の目的を見失う
本書では、今回紹介しきれていない豊富な事例をあげ、
いかに人間が「不合理」な生き物であるかにフォーカスしております。
ただし、「不合理」だから「悪い」わけではないこともあわせて私は強調したいです。
なぜなら、完全無欠な人間なんて、存在しないからです。時として「不合理」が、
「人間らしさ」「ユーモア」「クリエイティビティ」の源泉になる面をもちあわせています。
「不合理」さを認めつつ、自身の思考や行動を見つめ直す際に適したおすすめの1冊です。
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