こんにちは。甘鯛です。
今回は自身の投資戦略の確立に非常に役立った『敗者のゲーム』がテーマです。
本記事は以下の読者様のお役にたてる内容になっております。
・投資のバイブル『敗者のゲーム』の要点を知りたい、
・インデックス投資の有用性について詳しく知りたい、
この本との出会いは、私が大学卒業間近の時期にさかのぼります。
投資初心者の私がリーマンショックに直面。大損失が生じたことで、
投資アレルギーに陥っていた際に、大学の図書館の金融本コーナーでみつけたのがきっかけ。
大学時代にはじめた米国株投資については、過去記事をご参照ください。
数多くの投資本を読んできた中で、本書は大変オススメです。
投資初心はもちろん、投資歴がそれなりにある方にとっても学びの多い1冊。
誇張ではなく、低く見積っても30回以上は読み返しています。
投資スタンスの再確認をしたい時、相場が大きく崩れた時、こうしたシーンで本書を再読します。
本記事では単に『敗者のゲーム』の書評に終始するのではなく、
自身の失敗体験も織り交ぜながら、本書のポイントを解説していく構成にします。
無知であった私が、どのようなミスを犯したのか、その過程を共有します。
これにより、他山の石にして頂き、読者様の投資判断にお役立てできれば幸いです。


著者紹介
著者名 | チャールズ・エリス (Charles Ellis) |
学歴 | エール大学卒 ハーバード大学M.B.A, ニューヨーク大学博士号 |
経歴 | ロックフェラー基金、ドナルドソン・ラフキン・ジェンレットを経て 1972年 グリニッジ・アソシエーツ設立。 代表パートナーとして投資顧問会社や投資銀行などの 経営・マーケティング戦略に関する調査、コンサルティングを手がけ 業界トップ経営者の間に圧倒的な信頼を得る。 2001年~ 代表パートナーを退任し、取締役に就任。 全米公認証券アナリスト協会会長、バンガード取締役などを歴任。 現在、ホワイトヘッド財団理事長。 |
著書 | 「Wining the Loser’s Game (敗者のゲーム)」 「Wall Street People」 「The Investor’s Anthology」 「Classics」「Classics Ⅱ」 「The Second Crash」など |
『敗者のゲーム』は1985年に刊行。
市場に勝ち続けることの困難さとインデックス投資の有効性を指摘し、
運用界業に大きな衝撃を与えた米国運用界の理論的支柱の一人。
『ウォール街のランダム・ウォーカー』で有名なバートン・マルキールもよく紹介されますね。
両者とも投資思想・スタンスが一致しており、共著もあります。
『ウォール街のランダム・ウォーカー』 については、『敗者のゲーム』同様、
投資のバイブルに位置づけられます。下記で詳細をとりあげておりますので、ご参考ください。
市場に勝とうとすることが無意味
この本書の主張の骨子になります。
株式市場は常に上下を繰り返していますが、多くの投資家は株式を高い値段で買い、
安い値段で売ってしまうことがとても多いです。
特に、個人投資家が市場にのって売買して儲けようとする行為は、
投資経験や専門知識が豊富な機関投資家と戦っていることを認識すべきであるとしています。
また、短期的に売買を繰り返していると売買手数料の他、
税負担などのコスト負担が増えていることも認識しておくべきであるとしています。
これらをトータルに考慮すると、結果として投資そのものが「敗者のゲーム」であると指摘。
個人が投資を行うには市場を受け入れる姿勢が最重要だと強調しています。
そもそも「敗者のゲーム」「勝者のゲーム」とは何を指すのでしょうか?
著者はこれらをテニスの試合を例に解説。
テニスには2種類のゲームが存在します。
・勝者のゲーム:プロおよび天才アマチュアのゲーム
・敗者のゲーム:その他大多数のゲーム
プロは得点を勝ち取るのに対し、アマはミスによって得点を失う。
『敗者のゲーム』21ページより
戦争では他の条件が等しければ、戦略上のミスを最少にする側が勝つ。
『敗者のゲーム』22ページより
上記の通り、ミスを最小にするものが勝者になりえる可能性が大きいと本書で語られます。
ここでいうミスとは、先述した売買・税コストに加え、売買タイミングなど。
「得点を勝ち取る」とは売買を繰り返すアクティブ運用で市場平均に勝つことを指しています。
しかし、投資理論を見ても現実を見てもアクティブ運用で市場平均に勝つのは困難です。
いかにミスを減らし、市場平均に素直な投資を行うかが、ゲームの明暗をわけることになります。
ミスを犯したものが敗者として脱落していく、これが「敗者のゲーム」と主張します。
《投資初心者時の私のミス》
こうして改めて振り返ると、
投資初心者の頃の私はまるで対照的な考えで、根拠のない自信に頼る運用を行っていました。
・市場平均(日経平均やS&P500)を超えるの容易だろうという謎の迷信
・株式を売った、買ったを積極的に行うことで利ザヤを狙う
・課税に対して無頓着で正確な知識がなかった
このような軽率で勢いに任せ、運用を進めた結果、運用益が生じることはありませんでした。
そればかりか、リーマンショックの直撃により、投資に対する恐怖心すら芽生えました。
当時の私のように、誤った知識・考え方で小さなミスを重ねてしまうことで、
暴落発生の際にボディーブローのように効き、結果的に市場からほぼ退場に至りました。
市場は「敗者のゲーム」になった
著者は、機関投資家の証券運用が「勝者のゲーム」から「敗者のゲーム」に変わったと力説。
アクティブ運用では勝てないから、ミスを犯さないパッシブ運用に変わるべきというわけです。
「敗者のゲーム」に移り行く数値データが示されているだけではなく、
非合理的な人間の感情コントロールの切り口からも主張が展開されるあたりは興味深いです。
特筆すべきは「個人投資家のための十戒」。個人的に共感したものをピックアップします。
①貯蓄すること。
『敗者のゲーム』150ページより
シンプルです。まずは支出を減らし、貯蓄し将来のリターンのために、投資を行うこと。
④自分の住宅を投資資産と考えてはいけない。
『敗者のゲーム』151ページより
購入時から価値が減少。ただし、家族の幸福のための投資としては意味がある、としています。
⑥証券会社の担当者に気をつけなさい。
『敗者のゲーム』151ページより
要は手数料が安く、自身で楽に管理可能なネット証券を活用することです。
⑨長期の投資目的と投資方針、資産計画を文書にして書き出し、それに沿って行動すること。
『敗者のゲーム』153ページより
これもシンプルですが1番重要だと私は考えます。
ニュース、SNS、インフルエンサーなどがこう言っているから、ではなく、
明確にした自身の投資方針・計画にしたがって運用を行うことが肝要になります。
暴落で相場が崩れた局面、ピンチの時に自身の投資スタンスや判断が問われるからです。
リーマンショック時は、不勉強のため、私は的確な判断ができませんでした。
対極的に、投資スタンスが確立していたコロナショック時は心に余裕をもち、
市場が大混乱する中、果敢に買い増しを行うことで、資産拡大に繋げることができました。
⑩直感を信じて投資してはいけない。
『敗者のゲーム』153ページより
これも⑨と同等に重要です。
根拠なき自身の相場感に頼るほど愚かなことはありません。
誰も相場は予測できません。どこが底か頂点なのかはあとになってわかること。
だからこそ、市場平均をとる指数連動のインデックスに投資を行うことに大きな価値があります。
インデックス投資が最適な投資方法
以上のポイントより本書の考えに沿って実行すべき施策を1言で表現すれば、
「広範囲に分散された時価総額加重平均型のインデックスファンドに長期投資をしなさい」です。
市場の平均を狙い、各種ミスを回避できる投資方法として、
インデックスファンドを長期視点で保有し続けることが個人投資家にとって合理的な選択です。
私自身の経験を述べると、
ハイテク個別株の売買で指数(S&P500)を大きく超える利益を得たことが何度かあります。
しかし、これが毎年必ず指数を超え続けることができるか?と問われれば、答えはノーです。
そもそも、S&P500の年平均リターンは、大まかに8%前後(1991年〜2021年10月時点で算出)。
これは、悪い数字では決してありません。
むしろ素晴らしい数字で年平均で8%を超える実績を毎年出し続ける投資家は少数派でしょう。
だからこそ、市場を軽視するのではなく、市場平均に素直に投資し続けることは、
シンプルかつ効果的でリターン着実に得ていく上で、非常に意義深いことだと考えています。



まとめ
本記事の執筆にあたり、本書を手にとり再読しました。
本当に重要なことは、いつだってシンプルだな、と改めて痛感しました。
市場平均のリターン狙う、本書の主張は以上です!
ですが、言うは易く行うは難しですね。
実際に、自身の投資方針に貫き、実行し続けることは想像以上に困難です。
コロナショック時には、株式を中心とするリスク商品が売り荒れ市場は大混乱に陥りました。
リアルタイムでサーキットブレーカー(取引の強制停止)を経験したのは私も初めてでした。
このように、投資方針が確立していない場合、狼狽売りをしてしまう投資家がほとんどです。
また、投資・投機対象の多様化も市場の早期退場に拍車をかける要因としてあるかもしれません。
市場平均を大きく上まる仮想通貨への投機、レバレッジETFなどへの過度な集中投資。
確かに、こうした投機・投資対象は、目先では魅力的な利益を生み出す可能性を秘めています。
ですが、20年ほどの長期期間で市場平均を凌駕し続ける可能性はそう高くはないでしょうし、
何よりも激しい値動きに目がいき精神衛生上、辛く短期での市場退場に繋がります。
本書終盤でも強調されていますが、
市場から退場しないことが、安定的にリターンを獲得し続けていく上でマストです。
市場平均に愚直に投資し、市場から退場しないような無理ない投資を続けたいですね。
私自身は、米国を代表する指数であるS&P500(米国約500社)ではなく、
VTI(米国約4000社)をコアに据えるする投資を今後も長期で投資し続けていく方針です。
S&P500とVTIのパフォーマンスは、両者で大きな差はありません。
小型株〜大型株へより包括的に投資可能なVTIを私は選好しますが、好みの問題ですね。
いずれにしても、市場に居続けることを最優先に考え、継続していくことが重要になります。
*投資活動は、あくまで自己判断でお願い致します。
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